シークヮーサーの未来を、ウシオの技術で

「シー」は酸、「クヮーサー」は食べさせるの意。収穫期は年3回。8月下旬~9月の果皮が緑色のものは「酢の物用」として、10~12月中旬は「ジュース用」、12月下旬~2月末の黄色く熟したものは「生食用」となる。

「長寿日本一」を標榜する、自然豊かな村が抱える問題

世界には「ブルーゾーン」と呼ばれる5つの地域がある。健康で長寿な人々が数多く暮らしているその地域では、100歳を超えてもなお活動的な暮らしを営んでいることが珍しくない。

そのブルーゾーンのひとつが日本にある。沖縄本島の北部、東シナ海に面した人口わずか約3000名の大宜味(おおぎみ)村だ。世界的にも珍しい亜熱帯照葉樹林の生態系の中で、数多くの希少な動植物が生息・生育する「奇跡の森」は、世界自然遺産の候補として注目を浴びている。
しかし、人々の健康長寿や豊かな自然環境に魅せられて訪れる研究者や企業が後を絶たない一方で、大宜味村は過疎化や少子高齢化、雇用問題や産業の衰退といった現実的な課題に直面している。

その大宜味村で今、全国シェア60%超を誇る「シークヮーサー」の無農薬化による、村興しへの挑戦がはじまっている。

「ブルーゾーン」という名称は、健康長寿なイタリアのバルバギア地方に「青色マーカー」で印をつけたことに由来するという。

無農薬でなければならない2つの理由

沖縄に原生するミカン科のシークヮーサーは、代謝を活性化させ疲労回復や美容に効果のあるビタミンCを多く含んでいるほか、ノビレチンという成分が豊富に含まれており、ガンの抑制作用や血糖値の上昇抑制、メタボリックシンドロームの予防効果があるとして注目を集めている。さらに最近では、アルツハイマー型認知症の予防やアレルギー抑制にも効果が期待されており、長寿との関連も注目されている。

「シークヮーサーは栄養価が高く、健康食品としての価値が非常に高い果実なのです。しかし、それに反して商品価値が低いという課題があります。市場動向や健康ブームに振り回されながら、ただ毎年同じように作っているだけでは産業として成り立っていきません。」

と、大宜味村で無農薬栽培に取り組んでいる太田紳氏は話してくれた。

無農薬で育てられたシークヮーサーを手にする太田氏。農薬や除草剤を使用していないため、木々の足元には草が覆い茂っている。

「私たち生産者が自らマーケットを定め、果実だけではなく用途や効果を見据えた加工までを考え、この村から発信していくことでシークヮーサーの新しい価値の創造、この村の産業の発展、子供たちに託し得る大宜味村を残したいと考えています。」

そのためにも、無農薬栽培である必要があるのだという。

「農薬をつかってしまうと土の中の微生物が死んでしまいます。農薬を使った方が見た目もキレイですし歩留まりも高いのですが、土や木の本来の力ではなく、農薬によって作らされているのです。農薬を否定するつもりはありません。しかし、農薬を使うと土を豊かにしてくれる微生物だけではなく、虫や鳥など多くの生き物にも影響を与えてしまいます。農薬を使用することはやむを得ないこととは理解していますが、やんばる地域の生態系を守りつつ、産業として成り立つ方法として無農薬栽培を考えていきたいのです。」

また、無農薬栽培は自然保護の観点だけではなく、ビジネス上のメリットもあるという。

「シークヮーサーは種が多いのが欠点なのですが、その種を有効活用できれば新しい価値を生みだせます。種に含まれるオイルは化粧品原料になりますし、搾りカスも有用です。果皮の価値も非常に高い。栄養価的にはシークヮーサーは本来捨てる所はひとつもありません。ノビレチン以外の有効成分も多く含まれています。ですが、農薬を使ってしまうと残留農薬の懸念から果皮や種を丸ごと使うことができないのです。果皮や種も余すところなく使い切り、例えばサプリメントなどに加工し出荷するためには無農薬が理想であり、それによって認知症の予防といった社会的な課題をも解決し得るのです。」

無農薬栽培の実現に向けた取り組み

この無農薬への取り組みに対し、ウシオグループのジーベックスは、三協エアテックから「オゾン生成装置」の無償貸し出し協力を得てグループ内の新たな協業体制を構築し、大宜味村における無農薬栽培の研究のサポートをしている。農薬は生き物に有害な成分を樹木に噴霧し寄ってきた虫などを殺傷するが、オゾン水に殺傷能力は無く、あるのは「脱臭能力」だ。

害虫と呼ばれる虫もごく少数であれば実害はほぼない。しかし、最初にとりついた虫が他の虫を誘引する物質を分泌することで、その数が増え、卵を産み付けることで結実の不良や、最悪の場合木枯れをおこしてしまう。その他の虫を引き寄せる物質の「ニオイ」をオゾンで消すことで、虫を殺さずに(生態系に影響を与えずに)シークヮーサーに最適な育成環境を保持できる、という仮説に基づいた取り組みだ。

(左)ジーベックスが農園に設置している三協エアテック製オゾン水製造装置  (右)オゾン水噴霧の様子
https://www.sat.co.jp/product/ozonegw/sat-gw.php#tab-point

 

 

この取り組みには、シークヮーサーに含まれるノビレチン研究の世界的第一人者である中部大学の禹 済秦教授も期待を寄せている他、地元の沖縄県立辺土名高等学校の高校生も参加している。

中部大学 大学院 応用生物研究科 禹 済秦教授/博士(医学・農学)。「地元生産物の付加価値を産業に繋げ、その地域と共に成長していくという視点で、地域興しは技術と販路を持つ企業主導が理想」と語る。

辺土名高校のサイエンス部に所属する生徒たちが、農園にいる昆虫の種類や数、特性などを調査し、オゾン水の害虫忌避の有効性と生態系への影響を観察し、その効果を立証しようとしているのだ。

この活動を引率する辺土名高校の東竜一郎先生は次のように話してくれた。

「日本唯一の亜熱帯で、多くの固有種を含む、多様性の高い動植物が学校の裏山に存在しています。ここで生産者の皆さんと一緒になって調査研究ができるということは、生物を学ぶ学生にとって最高の環境です。
実は、この高校は今でも過疎化の影響で統廃合や分校化といった危機にあります。ですが、何とかこの高校を残し、生き物が好きな子供たちのために生きた学びの場を提供し続けられるよう取り組んでいます。おかげ様で、日本全国から生き物好きな生徒たちが少しずつですが集まってきてくれるようになりました。」

全国でも稀な「環境科」を要し「生き物博物館」のある学校として有名な辺土名高校。シークヮーサー農園のオゾン水調査研究はサイエンス部(25名)が担当している。辺土名高校で生物を教える東 竜一郎先生(左から二人目)のもと、昆虫からトカゲ、ヤギまでさまざまな生き物を飼育、観察している、

ウシオのSDGsへの取り組み

この取り組みはまだまだ始まったばかりであり、ウシオのサポートもここ数年での売上貢献を期待してのものではない。社会課題の解決を通して自社の社会的価値を上げ、その結果として経済価値を上げていくというウシオのビジョン、そして「あかり・エネルギーとしての光の利用を進め、人々の幸せと社会の発展を支える」というミッションに照らし、グループとして長期的な目線でのサポートを決めたものだ。

琉球王国から続くシークヮーサーの歴史にウシオの技術がどのように貢献できるのか、これからも随時レポートしていく予定だ。